サイズフェチ小説 とあるメルトダウナーの縮小遊戯

【GTS・縮小】とあるメルトダウナーの縮小遊戯 その2[虫かごの住人編]

【GTS・縮小】とあるメルトダウナーの縮小遊戯
その2[虫かごの住人編]
※本作は非公式の二次創作フィクションです。原作とは関係ありません。サイズ差による恐怖や残酷な展開を含みます。


学園都市、第七学区。深夜の高級マンションに、シャワーの音だけが響いていた。
「……はぁ」 麦野沈利は浴室の壁に片手をついた。今日の仕事は終わった。研究施設は壊滅し、研究員たちは社会から姿を消した。依頼は成功。それなのに、胸の奥には妙な重さが残っていた。
子供たちを実験から救おうとした研究者たち。自分たちの危険を承知で学園都市の暗部を告発しようとした人間。世間の価値観なら、正義の側にいたのだろう。
そんな正義の側にいる人間に危害を加えたてしまった。元から真っ当な人生なんて歩けるはずもないけど、結婚し、普通の家庭を築いたり、恋愛をしたりすることはもうできないだろう。
それをより痛感してしまった。
「……笑わせんじゃないわよ」 吐き捨てても、孤独は消えなかった。誰にも本当の自分を見せられない。
やがて麦野は顔を上げた。「……そうだ。まだ、あいつらがいたじゃない」 寝室のサイドテーブルには、研究施設から持ち帰った透明な虫かごがあった。
どうせまともに生きれないのなら、せめてとことん楽しもう。諦めたような、吹っ切れたような気持ちだった

バスローブ姿の麦野が虫かごを覗くと、底にいた研究員たちが一斉に後ずさった。彼らは数時間前まで白衣を着て仕事をしていた普通の人間だった。今では透明な壁すら越えられない。
「おーい、聞こえてるぅ? この前フレンダとじゃれ合ってた時に、足をくすぐられてさ。最初はムカつくだけだったんだけど、妙に癖になっちゃって」
麦野は笑って両足を示した。「左足と右足、二組に分かれてくすぐりなさい。上手だった方を生かしてあげるわ。ちゃんと頑張ったら、最後には元に戻してあげるから」
「元に……?」 研究員たちの間に小さなどよめきが走った。元の大きさに戻れる。研究所の外へ出られる。家族に会える。その期待に、誰もがすがりついた。
蓋が開くと同時に、数人が出口へ駆けた。だが巨大な指が素早く降りてきて、逃亡者を捕まえる。ひとりが麦野の口元へ運ばれ、姿を消した。生きた人間の踊り食い。せっかくなので舌で押しつぶして味を確かめようとしてみた。
「……小さすぎて味なんかわかんないわね」 麦野は何でもないことのように呟いた。残された者たちは凍りついた。彼女の冗談と本気を見分ける方法など、もうなかった。
「ほら、さっさと始めなさい」 麦野はベッドに座り、両脚を前へ投げ出した。

佐伯は左足班を率いて歩き出した。目の前にあるのは足の甲のはずだった。しかし彼らには緩やかな丘にしか見えない。指は並び立つ肌色の円柱、爪は滑らかな板、指の付け根は深い谷間だった。
「ここを登るのか……」 研究員の一人が皮膚の皺に手をかけた。柔らかく、体重を乗せるとわずかに沈む。足場を探しながら一歩ずつ進むしかない。
「親指と人差し指の間を狙おう。少人数でも反応があるかもしれない」 佐伯の指示で八人が谷間に入った。左右の壁は高く、奥へ進むほど出口が遠く感じられる。
一方、右足班の村上たちは足裏に回り込んだ。細かな皺が幾筋もの溝となり、土踏まずは傾斜した広場のようだった。「全員で別々に動いても駄目だ。場所を絞ろう」
小さな指で皮膚をなぞり、衣服の端を使い、一定の間隔で刺激を繰り返す。麦野には最初、何も伝わらなかった。
「……ん? あんっ」 不意に麦野が声を漏らす。佐伯たちは顔を見合わせた。「効いたぞ。続けろ!」
「ちょっと、そこばっかり狙うんじゃないわよ!」 麦野が笑うたび、左右の指がわずかに動く。佐伯は不安になった。「待て。指の動きが大きくなっている。少し離れろ」

「……あんっ、もう! くすぐったいってば!」 麦野がひときわ大きく笑った。その瞬間、反射的に足指をぎゅっと閉じた。
佐伯の視界で右側の壁が動いた。次いで左側の壁も迫ってくる。二つの巨大な壁が、同時に近づいていた。「逃げろ!」
八人は出口へ走った。だが、彼らの脚では到底間に合わない。「開いてくれ!」「誰か!」必死に指を押し戻そうと全力で抵抗するも意味がなく、叫び声も届かず、空が細い線になり、やがて視界が閉ざされた。
「きゃははっ! もう、無理!」 麦野は笑いながら膝を曲げ、ようやく指を開いた。「ごめんごめん。思わず閉じちゃった」
「ぶちっ」そこにはもう、動く人影はなかった。八人全員が命を落としていた。8人もの人間が潰されたにも関わらず、足の指にはわずかばかりの赤いシミが残るばかりだった。
麦野は目を凝らし、小さく息を吐く。「……あー。やっちゃったか。わざとじゃなかったんだけど」
足の甲にいた村田は一部始終を見ていた。「佐伯さん……?」 返事はない。ついさっきまで相談していた仲間が、たった一度の反射運動で消えた。
「ねえ、そこのあんた」 頭上から声が降った。「さっきの場所、結構くすぐったかったからさ。代わりにやってよ。今度はなるべく動かないようにするから」
村田は震える足で立ち上がった。巨大な指の谷間を見つめる。断る自由はなかった。

時間が経つにつれ、麦野の気分は奇妙に変化した。細かな刺激に思わず笑い、肩の力が抜け、頬が熱くなる。最初はただのくすぐったさだったのに、次第に落ち着かないほど気分が高揚していた。
「……何よ、これ。フレンダの奴、変な癖つけてくれちゃって」 照れ隠しのように悪態をつく。重苦しい考えはしばらく遠ざかり、笑い声が部屋に響いた。
そのたびに小人たちは身を伏せた。麦野が足首を曲げれば、足裏は立ち上がる壁になる。指を開けば谷が広がり、閉じれば出口が消える。彼女の些細な動きが、彼らには避けようのない災害だった。
「右足も、ちょっといい感じになってきたじゃん」 村上はその声に安堵したが、隣の研究員は泣きそうな顔をしていた。「俺たちは……こんなことをするために研究者になったんじゃない」


「……はぁ。もういいわ」 麦野はベッドに背中を預け、大きく息を吐いた。「左足も右足も頑張ったし、引き分けでいいんじゃない?」
研究員たちの間に安堵が広がった。村上が思い切って尋ねる。「あの……最初のお約束は?」
「約束?」 麦野は首を傾げる。「元に戻してくれると……言いましたよね」
麦野は「ああ」と笑った。「言った言った。ちゃんと覚えてるわよ」
村田の胸が高鳴った。戻れる。元の身長に。家族のもとに。、元の生活に。
「ほら、全員集合。元に戻してあげるから」 麦野はサイドテーブルに手を伸ばした。研究員たちは期待を込めて見上げた。彼女の指先に、何か装置でも現れるのだろうか。
ところが持ち上げられたのは、見覚えのある透明な容器だった。
「……え?」 村田の声がかすれた。
ぱかり、と虫かごの蓋が開いた。麦野は足の甲に残った研究員を一人ずつつまみ、底へ戻していく。「ほら、暴れないの。落としたら危ないでしょ?」
右足班も同じように収容された。村上が必死に叫ぶ。「違います! 元の大きさに戻してくれるんじゃ……!」
麦野は不思議そうに瞬きをした。それから、意味を理解したように口元を歪める。
「あっはは! 何、勘違いしてんの? 元に戻してあげるって言ったじゃん。あんたらが元いた、この虫かごにさぁ」
研究員たちは声を失った。
「嘘はついてないでしょ?」 麦野は楽しそうに笑い、最後の一人を虫かごへ入れた。
ぱちん。蓋が閉じられる。
「両方合格。今日はこれで終わり。また気が向いたら遊んでもらうから、それまで大人しくしてなさい」
虫かごがサイドテーブルへ置かれた。麦野は明かりを落とし、布団に潜り込む。「……ふふっ。明日は何して遊ぼうかにゃーん」
暗闇の中で村田は透明な壁にもたれかかった。「……俺たち、元に戻れると思ったのにな」
「あの女にとって、俺たちは……」 村上は言いかけて口を閉じた。遠くのベッドから、穏やかな寝息が聞こえてきた。
彼女にとっては楽しい一日の終わり。彼らにとっては、希望が言葉遊びひとつで消えた夜だった。

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